少年事件の対象となる「少年」とは、少年審判時に20歳未満の者をいいます。そして、少年事件の手続きは、少年審判や家庭裁判所が行う処遇決定を通じて少年の成長発達を図ることを目的としています。従って、少年事件では、20歳以上の成人の刑事事件とは異なる手続きが取られることになります。
また、少年は、犯罪行為を行ったと疑われる場合だけでなく、将来犯罪行為を行うおそれがある場合も家庭裁判所に送致されます。これを虞犯少年といいます。
少年が犯罪を行った場合の大まかな手続きの流れは以下のようになります。
嫌疑が不十分の場合は、釈放されることがあります。
家庭裁判所へ送致され、少年鑑別所へ送致する観護措置をとるか否か判断されます。また、一定の重大事件については検察官へ送致されます。
(1)観護措置がとられた場合
観護措置とは、家庭裁判所が調査及び審判を行うために、少年の身柄を保全して調査・鑑別をしながら、少年を保護する措置のことです。この措置がとられると、少年は鑑別所へ通常4週間(最大8週間)入ることになります。
(2)観護措置決定が出されなかった場合
事案が重大でなかったり、少年を保護する必要性がないと判断された場合、少年はその日に釈放され、帰宅することができます(実務上「一時帰宅」といいます)。その後、通常は自宅で生活をしながら調査を受け、審判を受けることになります。
(3)検察官送致(逆送)
少年であっても保護処分ではなく、成人と同様の刑事処分が相当であると判断された場合や少年が20歳以上であることが判明した場合には、家庭裁判所から検察官へ送致されます。いわゆる「逆送」といわれる措置です。また、犯罪を行った時点で少年が16歳以上であり、故意により被害者を死亡させた場合は、原則として逆送されます。
検察官送致されたもの以外は、審判が開始されます。ただし、事件が極めて軽微である場合など、事案によっては審判が行われない場合もあります。
審判の流れは、通常以下のとおりです。
(1)少年・保護者の人定質問
(2)黙秘権の告知
(3)非行事実の告知と非行事実に対する少年の陳述
(4)非行事実に対する付添人の陳述
(5)非行事実の審理
(6)要保護性に関する事実の審理
(7)調査官・付添人の処遇意見陳述
(8)少年の意見陳述
(9)決定告知
審判では、最後に裁判官から決定が言い渡されます。決定は以下のようなものがあります。
(1)不処分
非行事実がそもそもなかった、いわゆる無罪の場合と、事案が軽微であり保護処分が必要ないと判断された場合は不処分となります。なお、ほとんどの不処分は、後者の場合です。
(2)保護観察
施設に入らず、社会内で保護観察所の指導監督を受けさせながら更生を図る処分です。少年は、月一回から週一回程度保護司を訪問して近況の報告をし、指導や助言を受けることになります。
(3)児童自立支援・児童養護施設送致
児童福祉法に基づいて設置されている児童自立支援施設、児童養護施設に送致されます。これらの施設では、下記の少年院と異なり、原則として施錠されていない部屋に入ることになります。なお、この処分は、ほとんどの場合15歳以下の少年が対象となります。
(4)少年院送致
矯正教育を目的とする少年院に収容されます。少年院には、以下の通り少年の年齢や心身の状況に応じて、4種類があります。
a.初等少年院(心身に著しい故障のない概ね12歳以上~概ね16歳未満)
b.中等少年院(心身に著しい故障のない概ね16歳以上~概ね20歳未満)
c.特別少年院(心身に著しい故障のない、犯罪傾向の進んだ概ね16歳以上~23歳未満)
d.医療少年院(心身に著しい故障のある概ね12歳以上~概ね26歳未満)
少年のほとんどは中等少年院に送致されます。
少年院の収容期間は、特に定めはありませんが、初等少年院と中等少年院は短期処遇(6カ月以内)と長期処遇(2年以内)があります。
(5)検察官送致(逆送)
死刑・懲役・禁固にあたる罪を犯した少年について、刑事処分を相当と認めるときに逆送されます。この場合、その後は成人の刑事手続きと同様に起訴、公判、判決という手続きがとられます。
(6)試験観察
相当期間家裁調査官の監督に付される処分です。試験観察は、最終的な決定を留保した中間的な決定ですので、観察期間経過後に再度審判が開かれ、その時点で上記の最終的な処分が出されます。観察期間は通常3~6か月程度です。